『書いて売れ!』はじめに&第1章の1


(A5判・208頁)



(B6判・218頁)

昨年の7月に発売されて以来、ネット書店のアマゾンにて、48週連続1万位以内にランクインし続けている(2005.7.7現在)、まさにコピーライティングの教科書とも言える1冊です。おかげさまで、2度も増刷になりました。






はじめに

 突然ですが、質問です。

 あなたがこれから販売しようとしている新商品について、次のようなアンケート結果があったとします。

 ・この商品が発売されても、たぶん買わない……70%
 ・この商品が発売されたら、絶対に買う…………30%

 さて、このデータ、あなたならPRの材料として使いますか? それとも使いませんか?
 ちょっと考えてみてください。

■デキる営業マンはポジティブ・シンキング

 さて、あなたはどちらを選んだでしょうか?

 「使わない」と答えた方。

 おそらく、あなたは「買わないと答えた人が70%もいる」、あるいは「絶対に買うと答えた人が30%しかいない」のでは、このデータを出すと返ってマイナスになると、ネガティブに捉えられたのではないでしょうか。

 一方、「使う」と答えた方。
 おそらく、あなたは「絶対に買うと答えた人が30%もいる」ということはすごいことだと、ポジティブに捉えられたのだと思います。

 要するに、何が言いたいかというと、同じデータでも捉え方によって、全然違ってくるということです。視点を変えれば、一見マイナスに思えるような材料も、じつはプラスになったりするものなのです。

 デキる営業マンというのは、こういうことに敏感です。
 なので、いま即座に「使わない」と答えた方は、まずは物事にはいろんな見方があるということを踏まえた上で、なるべくポジティブに捉えるよう心がけましょう。

 もし、あなたのライバルがこのデータを使っていたとしたら、あなたはこの時点でライバルに一歩遅れをとったことになるのですから・・・。

■書く力とは、相手の心をつかむ力

 では次に、「この商品が発売されたら、絶対に買うと答えた人が30%」というデータをPRの材料として使う場合、あなたならどのように表現しますか?
 まずは、次の2つの文章を読み比べてみてください。

 もし、あなたがバイヤーだったとしたら、A、Bどちらの文章の方が、より仕入れたくなるでしょうか?

 A:アンケート調査の結果、「発売されたら、絶対に買う」と答えた人が30%いた商品です。
 B:アンケート調査の結果、「発売されたら、絶対に買う」と答えた人が30%いた商品です。

 いかがでしょう?
 AとBの違いは、「も」があるかないかだけなのですが、「も」が入っているBの方が、30%という数字がすごく多いように感じられると思います。

 さらに、BとCではどうでしょうか?

 B:アンケート調査の結果、「発売されたら、絶対に買う」と答えたが30%もいた商品です。
 C:アンケート調査の結果、「発売されたら、絶対に買う」と答えた熱狂的なファンが30%もいた商品です。

 BとCは、ただの「人」か「熱狂的なファン」かという違いだけですが、Cの方がなんとなく売れそうな気がしませんか? 

 「熱狂的なファンが30%もいるんだったら、仕入れてみようか!」ということになるのではないかと思います。

 このように、ちょっとした表現の違いで、相手の心をつかむことができる――。これが「書く力」なのです。

 もちろん、これはあくまで1つのテクニックにすぎません。

 しかし、こういうことを知っているのと、いないのとでは、同じことを書いたとしても、雲泥とまでは言いませんが、差がつくことは紛れもない事実なのです。

 ということは、もし、あなたがデキる営業マンを目指すのであれば、このような「書く力」を身につけておいた方がいいと思いませんか?

■セールスライティングに文才は要らない

 書くことの重要性については、前作『「書く」マーケティング』(明日香出版社)で詳しく書きましたので、ここで多くを語るつもりはありません。

 ですが、一つだけ言っておくと、電子メールやインターネットの普及に伴って、営業マンにも「書く力」が求められるようになったことは確かなのです。
 「オレは営業だから、書けなくたっていいんだよ!」と、言っていられる時代ではなくなったということです。

 よく、「私には文才がない」と言って文章を書こうとしない人がいますが、ハッキリ言いましょう!
 セールスライティングにおいて、文才は必要ありません。普通に意味が通じる文章が書ければ、それで問題はないのです。

 要は、書くか、書かないか。書く気があるのか、ないのか、の問題なのです。

 私の知っている優秀な営業マンたちは、だいたい何かを書いています。オリジナルのお礼状だったり、ニュースレターだったり、レポートだったり、メルマガだったり、ブログだったり・・・。

 そして、彼らはそれらを書くことによって、着実に売上を伸ばしているのです。

 ただ、このようなことをしている営業マンはまだまだ少数派。したがって、いますぐに始めれば、あなたもデキる営業マンになることができるのです。

 「でも、書けと言われても、何を、どう書いていいのかわからないよ」という人も多いことでしょう。

 しかし、ご安心ください。
 本書をお読みいただければ、何を、どう書けばいいのかが、きっとわかるようになるはずです。

 また、「書く力」を磨くためのポイントも書いておきました。
 さらに、できるだけ事例を掲載することで、すぐに実践できるよう工夫したつもりです。
 書けば、必ず結果はついてきます。
 さぁ、あなたも、書くことで売上を伸ばしましょう!

                             マーケティングライター・堀内伸浩







第1章 デキる営業マンは、みんな何かを書いている!

1.たかが見積書、されど見積書


■見積書なんて、誰が書いても同じ?

 もう15年以上も前のことになりますが、私はかつて某食品メーカーで営業の仕事をしていたことがあります。
 その当時、私が書いていたものといえば、取引先のスーパーに出す見積書くらいのものでした(当時、私たちが使っていた見積書は、2枚複写になっていて手書きで書くタイプのものでした)。

 しかも、その内容がこれまた非常にシンプルで、私が見積書に書いていたことは、「売りたい商品の名前」と「値段」と「希望の数量」と「合計金額」だけ。
 いま思うと、本当に恥ずかしくなるくらい、そこには何の工夫もなかったのです。

 それでも、当時の私は、
 「見積書なんて、みんなそんなものだろう」
 と思っていましたし、事実、何人かの親しい先輩に見積書を見せてもらったことがありましたが、だいたい似たり寄ったりの内容だったように記憶しています。

 ただ、その先輩たちは、私と違って弁が立ちました。
 だから、営業成績も上位の方でした。

 したがって、当時の私は、「売上を伸ばすには、もっと話術を磨かなければいけない!」と思っていたのです。

 もっと流暢に喋れるようになりたい。
 おもしろい話ができるようになりたい。
 気のきいたことが言えるようになりたい。

 そんなことばかり、考えていました。

■えっ、これが見積書?

 ところが、ある出来事をきっかけに、私の考え方は180度変わりました。
 その出来事とは、先ほどの先輩たちとは別の先輩(Aさん)の見積書を見せてもらったことです。

 Aさんは、常にトップの営業成績で、私にとっては憧れの存在でした。
 ただ、私の見たところでは、Aさんはそれほど弁が立つ方ではなかったので、「どうしてなんだろう?」と、いつも不思議に思っていたのです。

 そんなある日、たまたまAさんの営業に同行させてもらえることになったため、私は思い切ってAさんに売れる秘訣を聞いてみることにしました。

 「どうして、そんなに売れるんですか?」と。

 すると、Aさんはおもむろに鞄の中から自分の見積書を取り出し、私に見せてくれたのです。

 (まさか、安い値段で売ってるんじゃないだろうな?)

 そう思いながら表紙をめくった私の目に飛び込んできたのは、私の想像していたものとは全く違うものでした。

 見た瞬間、思わず、
 「えっ、これが見積書なの?」
 と、叫んでしまったほど、Aさんの見積書は、私がこれまで見てきた見積書とは、全然違ったものだったのです。

■タイトルのある見積書

 一番驚いたのは、それぞれの見積書に「タイトル」が付いていることでした。
 正確には覚えていませんが、だいたいこんな感じのタイトルが書かれていたように思います。

 「秋の夜長のお供に!【○○○○フェア】のご提案」
 「【1週間で○○万円売上がアップする企画】のご提案」
 「3日で完売確実!【当社売れ筋ベスト5特売】のご提案」
 「儲けてください!【粗利30%セール】のご提案」

 見積書にタイトルを付けるなどという発想は全くなかっただけに、私にとっては衝撃的なことでした。
 Aさん曰く、「見積書にタイトルを付けるようになってから、相手が興味を持ってくれるようになったし、こっちの意図も伝わりやすくなった」とのことでした。

 さらに、驚いたのは、タイトル以外にも、見積書にいろんなことが書き込まれていたことです。

 例えば、こういったものです。

 @商品が完売した場合の粗利総額
 A前回、そのお店で同じ商品を特売したときの売価と、完売までの日数
 B万一、売れ残った場合の対処法
 C店内POP用のコメント


 ほかにも、まだ何か書いてあったような気がしますが、いまでも鮮明に覚えているのはこんなところです。

■見る側の立場になって書かれた見積書

 じつは、Aさんが見積書に書いていたこれらの項目には、ある共通点があります。
 それは、お客様である仕入担当者の立場になって書かれたものであるということです。

 要するに、Aさんは仕入担当者が知りたい情報や役立つ情報を、先回りして見積書に書いていたというわけです。

 確かに、@粗利総額が書いてあれば、担当者はいくら儲かるのかが一目でわかりますし、A過去のデータが書いてあれば、判断がしやすくなります。

 また、B売れ残ったときの対処法が書いてあれば、担当者としては安心して仕入れられるわけです。

 さらに、CPOP用のコメントに至っては、もはや営業マンの域を超えているといっても過言ではないでしょう。
 商品名の横に、「TVCMオンエア中!」「○○のCMでおなじみの商品です」「保存に便利な個包装」「昔懐かしい味です」といったコメントが添えてあったわけですが、ここまで書いてもらえれば、担当者はラクです。そのまま使うかどうかは別にして、POPを書くときの参考にはなるわけですから。

■これはもう、見積書ではなく提案書

 「そんなの、わざわざ見積書に書かなくても、口で言えばいいんじゃないの?」と思った人もいるかもしれませんが、決してそうではありません。
特に、B売れ残ったときの対処法については、文章で書いてあるからこそ、信用・安心につながるわけです。

 もしも、あなたが仕入担当者だとしたら、口約束ときちんと文章で書かれた約束、どちらが信用できますか?

 また、CPOP用のコメントに関しては、「そこまでしなくてもいいんじゃないの?」と思った人も多いことでしょう。

 しかし、そこまでやるから、相手は感動するわけですし、そこまでしたからこそ、Aさんはトップセールスになれたのだと、私は思っています。

 普段、何気なく書いている見積書も、工夫次第では立派な提案書になる――。

 ピンと来た人は、いますぐ実践してみてください。
 ちなみに、Aさんの見積書を見て以来、私の営業成績がアップしたことは、言うまでもありません。

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